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My Hair is Bad ハイパーホームランツアー @高田馬場CLUB PHASE 3/3

初めて「真赤」を聴いた時のMy Hair is Badの印象は、「めちゃエモくなったback number」というものだった。しかし昨年、いろんなフェスやイベントでのライブを見るたびに、その印象は「リアルで赤裸々なラブソングに特化したサンボマスター」なんじゃないだろうか、と変化した頃にはもう人気は爆発しており、あっという間にワンマンはチケットが取れず、去年末にリリースされたメジャーでの初のフルアルバムとなる「womans」はオリコンTOP10入りの大ヒットという状況にまでなっていた。

そんな喧騒の中、ボーカルの椎木知仁は夏からの連戦に次ぐ連戦の影響もあってか、喉が掠れた状態でのライブを繰り返し、年末にポリープの手術を受けた。リリースツアーは予定通りに昨年のスケジュールは完遂し、2017年は3月からの始動。5月まで続くため、この日はまだまだ中盤である。

19時過ぎに場内が暗転すると、山田淳(ドラム)、山本大樹(ベース)に続いて椎木が登場。襟足のあたりが金髪に染まっている。

「My Hair is Badです、よろしくお願いします!」

と言うと、「womans」のオープニング曲である「告白」からスタート。

「心身深沈死んだダンサー」

などのキラーフレーズがテンポの速いギターロックに乗って次々と放たれていき、「接吻とフレンド」とまずはアルバムの流れ通りの立ち上がりだが、バンドの演奏は椎木の休養による影響を感じさせないくらいに非常に力強い。

アルバムの中では後半に収録されている「革命はいつも」もこの日は前半に演奏されたが、

「若者はずっと悩んでいた」

という歌詞の「告白」でも若者の気持ちを代弁していたが、

「生徒が握った采配 担任の真の正体」

と韻をしっかり踏みながら若者の気持ちを代弁しているかと思いきや、

「革命が起きて スペードの3が死ぬだけ」

と、実はトランプゲームの「大富豪」の革命のことなんじゃないか?と思わせる歌詞は本当に見事で、ただでさえインディー期から鋭かった歌詞はさらに鋭さを増しているのがわかる。

ハードな音像の中で赤裸々な言葉が並べられる「マイハッピーウエディング」から、この日の会場のPHASEがこの日で16周年を迎えたことを祝福し、

「紛れもなく、東京の歌を」

と言って演奏されたのは、

「ただ陽が落ちた、下北は地下のライブハウス」

という歌詞が確かに「東京」を感じさせる「真赤」でさらにサウンドは加速していき、椎木のTシャツはすでに汗で色が変わり始めてきている。

前半はアッパーかつエモーショナルな曲で攻めまくったが、「ドラマみたいだ」「悪い癖」という新作収録曲以外の曲で一度緩急をつける。「悪い癖」では2コーラス目の男女の会話の歌詞で椎木の歌い方が急に芝居かかった感じになるのが面白い。

ポリープ手術での1〜2月の休養中に椎木はひたすら主夫的な生活をしていた(この段階ですでに「え?」という感じではあるが)と語り、山本は人生で初めてディズニーランドに行ったことを報告すると、椎木も別でディズニーランドへ行ったことを明かし、山本の

「誰と行ったの?」

という問いに対し、

「住まわせてくれてた女の子と(笑)

家賃払ってなかったから(笑)

でも1月末に追い出されたけど(笑)」

と、そんなこと言っていいのかと思ってしまうことも容易く口に出してしまう。

そんなことを口にしながらも、

「ドキドキしたい!」

と「アフターアワー」、山本のリズムが否が応でも躍らせる「元彼氏として」とライブ定番曲であり、バンドの代表曲も欠かすことなく演奏し、この瞬間であり、人生そのもののようにあっという間に終わる「クリサンセマム」、

「化粧を少しだけ濃くしてこい

飯代もホテル代も俺が出す

ありがとうもごめんねも言わなくていい

だからつべこべ言わず服を脱げ

女の子の日?先に言え

もう払っちゃってるんですから」

という物議を醸しそうな歌詞なのに若い女性が熱狂しているのが実にシュールに見える「mendo_931」と、ショートチューンが続くと、社会に対して目線の向いた「ディアウェンディ」「ワーカーインザダークネス」と、恋愛のイメージが強いバンドの違った一面を見せ、

「誰が死んだかなんて興味ない

暗殺も幸福の科学もどうでもいい」

とひたすらに言葉を並べながら、今この場所でしかない空間を作り上げていく「from now on」。もちろんその言葉の中にはこのライブハウス16周年というワードも含まれている。

もはやライブでやらない時はない曲だが、この曲があるからこそ、マイヘアのライブは毎回その日にしか見れないものになっている。

そして恋愛以外の一面の極致とも言えるのは

「大事な曲。でも暗い曲じゃない。光が射しますように」

と言って演奏された「戦争を知らない大人たち」。

自分はどんなに曲が良くても、ラブソングには泣けたり感動したりすることはできないし、そこに共感や感情移入することもできない。もちろんマイヘアはラブソングをたくさん作ってきたし、そういう曲を評価されて今の位置まで来たバンドだが、そういう曲よりも

「父とやったキャッチボール 公園のスコップ

ちょっとでも褒めてもらいたかったんだ

真っ黒になった僕に 母は優しかった

きっと 愛されてたんだ」

というこの曲の歌詞の方がこれまでのいろんな記憶がフラッシュバックしてきて、込み上げてくるものがたくさんある。それは自分が椎木と同じようにかつては野球少年で、父とキャッチボールをしていたからというのもあるのかもしれないが。

「彼氏として」を切なく響かせると、「womans」の中で最も聴かせる曲である「恋人ができたんだ」、そしてラストは

「ありがとう また今度って 僕らは車を走らせた

大丈夫さ きっとどうにかなるだろう」

「旅は続いていくんだ

未来が耳元を切って 次の街へ」

とツアーバンドの生活をそのまま歌詞にしたような「音楽家になりたくて」を音楽家としてエモーショナルに、次の街への旅立ちの凱歌として鳴らした。

アンコールではこの日のために椎木が銀座で髪を切ったことを告げると、「売れてるな!」という声が客席から響き、

「全然売れてねえよ!フォーリミの武道館行った時、声かけてきたの2人だけだぞ!その後に来たオーラルにはみんなキャーキャー言ってるのに!普通にお客さんと同じ電車に乗って帰ったわ!フレデリック見に行った時は0人だけど(笑)」

と応戦。確かに椎木は1人でいたらあまりわかりやすい感じではないが。さらにたまたま行った居酒屋で店員に気付かれ、店長とLINEを交換したというとんでもないエピソードも開陳する。その居酒屋も女性と2人で行ったというのがもうどうしようもないくらいに椎木である。

そうして笑わせながら、「優しさの行方」で間奏で頭を振りながらギターを鳴らし、最後にはドラムセットから大ジャンプして締め、最後までこの会場の16周年を祝いながら次の街へ旅立って行った。

ツアータイトルの「ハイパーホームラン」とは、前回の「ホームラン」ツアーを超えるツアーにすべくタイトルを考えた結果、椎木から出てきたものだという。

近年の日本のプロ野球界での「ハイパーホームラン」といえば、ソフトバンクホークス柳田悠岐横浜スタジアムのバックスクリーンを破壊したホームランだが、マイヘアは当てに行くことも、合わせることもできない、常にフルスイングしかしない。それでもしっかりと毎回ガッカリさせないくらいの安定した率を残し、それにその日その場所だからこその言葉をガンガン放り込んでくる機動力も備えた様はマジでロック界の柳田悠岐。復帰のシーズンということも含めて。女性事情を曝け出し過ぎなとこは別だけど。

1.告白

2.接吻とフレンド

3.革命はいつも

4.マイハッピーウエディング

5.真赤

6.グッバイ・マイマリー

7.ドラマみたいだ

8.悪い癖

9.アフターアワー

10.元彼氏として

11.クリサンセマム

12.mendo_931

13.ディアウェンディ

14.ワーカーインザダークネス

15.from now on

16.戦争を知らない大人たち

17.彼氏として

18.恋人ができたんだ

19.最愛の果て

20.音楽家になりたくて

encore

21.優しさの行方

告白

https://youtu.be/yR0KgP7OrSw

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